" 晩年の湯川は、駆け出しの若手が初めてやる研究発表などにも、ひょっこり顔を出すことがよくあった。
顔を出すだけならまだよいが、いつも必ず質問をする。
質問するだけならまだよいが、それが決まって愚にもつかない質問なのである。
ノーベル物理学賞の大先達からの質問に、ルーキー物理学者はほとんどパニックに駆られるが、しかも質問内容が目が点になるようなものなので、別の意味でも度肝を抜かれる。
何とかその質問に、おそらく会場の誰もが分かりきった答えを返すと、湯川ははっと気付いたように
「あかん、またやってしもた」
と頭を抱え、己が発した愚問に大いに落ち込むのである。
しかし湯川は止まらない。
そんなことも忘れたかのように、また研究発表に顔を出し、必ず質問し、それもほとんど必ず愚問なのである。
しかし愚問も、とことん数打つうちには当たる。
それも、当たりどころはとことん悪く、今度は発表者のみならず会場にいる誰もが気付かなかった大愚問だったりする。
会場の空気がざっと変わる。
的には当たらぬが、その土台をガツンと震わせる。
ちょっと待て、今のどうなんだ? もしかしてこうか? そんな馬鹿な話があるか。ああでもない、こうでもない。
場は騒然となり、侃侃諤諤の議論が巻き起こり、時には新しいアイデアだって生まれたりする。"
顔を出すだけならまだよいが、いつも必ず質問をする。
質問するだけならまだよいが、それが決まって愚にもつかない質問なのである。
ノーベル物理学賞の大先達からの質問に、ルーキー物理学者はほとんどパニックに駆られるが、しかも質問内容が目が点になるようなものなので、別の意味でも度肝を抜かれる。
何とかその質問に、おそらく会場の誰もが分かりきった答えを返すと、湯川ははっと気付いたように
「あかん、またやってしもた」
と頭を抱え、己が発した愚問に大いに落ち込むのである。
しかし湯川は止まらない。
そんなことも忘れたかのように、また研究発表に顔を出し、必ず質問し、それもほとんど必ず愚問なのである。
しかし愚問も、とことん数打つうちには当たる。
それも、当たりどころはとことん悪く、今度は発表者のみならず会場にいる誰もが気付かなかった大愚問だったりする。
会場の空気がざっと変わる。
的には当たらぬが、その土台をガツンと震わせる。
ちょっと待て、今のどうなんだ? もしかしてこうか? そんな馬鹿な話があるか。ああでもない、こうでもない。
場は騒然となり、侃侃諤諤の議論が巻き起こり、時には新しいアイデアだって生まれたりする。"